最高裁判所第二小法廷 昭和61年(行ツ)30号 判決 1986年5月30日
東京都江東区大島七丁目三九番三-二〇三号
上告人
中沢孝幸
東京都江東区亀戸二丁目一七番八号
被上告人
江東東税務署長
渡邊幸男
右当事者間の東京高等裁判所昭和六〇年(行コ)第七二号通知処分取消請求事件について、同裁判所が昭和六〇年一一月二〇日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立があつた。よつて、当裁判所は次のとおり判決する。
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告人の上告理由について
所論の点に関する原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。右違法があることを前提とする所論違憲の主張は、失当である。論旨は、ひつきよう、独自の見解に立つて原判決を論難するものにすぎず、採用することができない。
よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 牧圭次 裁判官 大橋進 裁判官 島谷六郎 裁判官 藤島昭 裁判官 香川保一)
(昭和六一年(行ツ)第三〇号 上告人 中沢孝幸)
上告人の上告理由
第一点 原判決には租税特別措置法第三五条一項に規定する「特別の関係がある者」の解釈を誤つた違法がある。
私は茲に両者間に存在する自然血族的関係については何も異論を申すのではない。
ただ此の条文が何の為にあるか、そして其れが本件に何故に適用されるのかを問い糾したい、それだけである。
すなわちこの条文が特別の関係にある者同志が相互に協力しあつて策を以つて税の軽減を図る不正を阻止する故のものである事は本より、条文の明記あるからと、其れだけの単純な解釈で問題解決とは余りにも法の精神を無視するに甚だしい。
事件の内容を適格に把握し、分析しそれに対応してこそ、法の平等は保たれるのである。
この一月十三日私は愚妻を失つたが中沢家からは弔電、花環等何一つとて無し、勿論当方からも全く知らさずではあるが、私事に亘り逸脱を詫びるが、この様な完全な断絶の状況であるにも拘わらず、法だけが両者間関係ありと解釈するは正に法解釈の横暴又、条文適用解釈の暴力とも言えるのではないだろうか。
法は活きていなくてはならない。本件の如く現状を無視した判決は、正に必死した法の解釈と言つても過言ではあるまい。
茲に本件内容をつまびらかにし公正な判決を求めるものであります。
第二点 既判決を良しとせば、憲法第十四条第一項に規定する法の下の平等に抵触し、加えて同法第二九条第一項に規定する財産権の保障にも反する事となりその違反がある。
以上の点からみて原判決は違法であつて破棄されるべきものである。